彼は自身の勝利を非常に喜び、喜びのあまり“モナコでは勝者は車を同国の王子の駐車場所に停める”ことになっていることを忘れてしまい、車をスタンドの伝統的に“閉鎖されている駐車場”に停めてしまいました。幸いなことに、ジェンソンは熟練したアスリートであるため、トラックを78周した後も、自分のトロフィーを取りに走るだけの十分な体力がありました。
若い頃のモナコでのその他の思い出として、1996年のグランプリで、オリビエ・パニスの勝利の瞬間に立ち会ったことが挙げられます。言うまでもなく、僕はその日の体験に大きなインスピレーションを受けました。フランス人ドライバーが、最も権威のあるフォーミュラ1レースで優勝したのです。さらに、オリビエは先日僕に、「次の勝者になってほしい。そうすれば、F1レースで勝利した最後のフランス人ですねと言われ続けることがなくなるから」と話してくれました。僕は「できるだけ早く実現するよう努力する」と彼に約束しました。
幸運にも、数年前にモナコのGP2で勝利した経験があるので知っているのですが、表彰台はモナコ大公アルベール2世のスタンド席に続く階段の一部で、本当にユニークな場所です。アルベール2世に仕えるアシスタントたちから、「アルベール2世ご一家のメンバーにはシャンパンを決してかけないように」と忠告されると、表彰式で有頂天になっていたのが、厳粛な気分になります。一方で、メディアの取材が終わってからしかチームのメンバーと集まれない他のグランプリとは違って、チームのメンバーは階段のすぐ下の所で待っていられるので、すぐに仲間と勝利を祝えるのはいいところです。
もし自分のキャリアにおいて、一度だけフォーミュラ1レースに優勝できるとしたら、もちろんすべてのグランプリは勝利する価値があるものなのですが、それでも僕はモナコで勝ちたいのです。疑問の余地なく、その日の表彰台でのシャンパンは、格別においしく感じられることでしょう。